作業療法士と病院

長期実習・身障編~私がブッ倒れた理由~

2つの希望が難なく通り、まずは実家に戻り身障系の実習からスタートした。

大きくて、改装したばかりのキレイな総合病院。学生である私たちをアドバイスしてくれるスーパーバイザーを始め、先生方も良い方ばかり。同じ時期に実習に来ていたS医大の学生の中には同じ高校卒の子もいて、最初の実習としてはかなり恵まれた環境だった。しかーし…ここでの私は

大変にボロボロな状態であった。

まず、もう精神科作業療法士になるんだもんね♪と極端に進路にこだわっていたため、身障系の勉強は超テキトーであり、知識が薄っぺらいことは日頃の実習ぶりや日々提出するレポートなどですぐバレる。日々バイザーの先生から容赦ないツッコミを浴びる。

担当させていただいた患者さんは乳がんオペ後の女性であり、上肢の機能維持訓練(運動機能・感覚機能などが衰えないように行う訓練)をさせていただいたのだが、とくに実習前半は私に対する不安そうな表情があからさまであり、申し訳ない気分でいっぱいだった。ストレスに耐え切れなかった私は、それまでイタズラ程度だったタバコを、1日1箱のペースで吸い始めてしまう。

さらに極めつけ。他のどの学生も犯さなかった失敗を、

私はやらかしてしまった。

優秀な学生とはほど遠かった私だけれど、そんな私を偉い整形の先生が「キミ、見てて面白いわ」とよくわからないフォローをしてくれたり、作業療法士の大先輩方が「今は出来なくても大丈夫」と励ましてくれたり、涙が出るほど良い先生方に恵まれていた。

その先生方に、飲み会に連れて行っていただいた時。実習の疲れやストレスの反動か、飲み会で私は必要以上にハジケてしまった。

当時、某体育大学でイッキ飲みを強要された学生が亡くなり社会問題になる少し前。ほろ酔いの先生方も確かに「学生さん飲め飲め~♪」とは言った。しかし、居酒屋のテーブルのど真ん中に置いてあった「ビッグマン」のでっかいボトルに残っていた焼酎をすべて飲み干せ、なんて誰も言わなかった。

それを私は、やってしまったのである。いや正確には、やりとげる前に意識が飛んでしまったのだけれど。

いやいや最近の子は強いなあ、とか、なんかあの子顔色真っ白じゃないか、とか、いろんな声やざわめきが音楽みたいに聴こえ始めて、鼻歌を歌いながらトイレに立ったときだったと思う。カシャ、と、カメラのシャッターが下りる時みたいに目の前が暗くなった。

そして、次に目覚めたときは病院のベッドの中。点滴の針から黄色い液体が流し込まれ、なんか股間が痛いんスけど、と思ったら尿カテーテル。

はあ?と首をかしげた瞬間猛烈な吐き気に襲われて、付き添いの人が差し出してくれたトレーに嘔吐した。

あれ?見たことあるなあこの人…ナースじゃないや、作業療法士の服着てる。その人が優しい声で言った。

「大丈夫?トイレの前で解剖されるカエルみたいなポーズで倒れてたのよ」
「あれ…N先生ですよね。私入院したんですか。ココどこッスか」
「どこって、ウチの病院よ」

あろうことか私は、実習先の病院に搬送されたのでした。忘れてましたよ。あの居酒屋から一番近い総合病院が実習先だってことを…

その後、来るわ来るわお見舞いに。作業療法士とかドクターとか、いろんな人がちょいと仕事を抜け出して、ニヤニヤしながらやってきてはねぎらいの言葉をくださった。

「いや~あまりに可哀想でね~」はい、とっても。
「大丈夫、大丈夫」いえ、ちっとも。
「これに懲りずに、また飲みに行きましょうよ」どのツラ下げていけばよいのでしょう。

ああ人生最悪の時だ!!!と、お見舞いの人たちが帰った後の病室で声を出さずに泣いた。どんなに慰められても、もう情けなくって涙が止まらなかった。

後からクラスメイトに聞くと、とんでもなく厳しい実習先もたくさんあったらしい。先生の言葉をメモしただけで、「新聞記者じゃあるまいし、現場に来たら体動かせ体!!」と怒鳴られたり、初日にちょっとモジモジしてるだけで、のっけから「突っ立ってて仕事が出来るか、バカ」と言われたり。

それに比べると私が選んだ病院は、穏やかで素晴らしい実習先だった。にも関わらず、飲んで倒れて入院するとは…

最後の日まで、なんとなく申し訳なさでオドオドしていた私。そんな私を見放さず、また最後まで飲みに誘ってくれた先生方。

なんの恩返しも出来ず、頭下げっぱなしで身障の実習は終了した。

しかし本物の涙はこの後精神科編でイヤというほど流すことになるのだった。

総仕上げは「長期実習」
長期実習・精神科編~私がイジメられた理由(1)~