作業療法士と病院

あり得ない!!どこもかしこもお年寄り(涙)

お年寄りが大の苦手なのに、介護療養型病棟という、高齢者病棟の担当になってしまった私。

お年寄りが苦手な理由は以下の通りである。

1.「昔は良かった」などと現代を否定する事をいうのがうざったくてイヤ
2.押し付けがましい
3.抑制がきかない
4.家電に弱い
5.記憶力が弱い
6.無駄に早起き
7.無駄に庭掃除と雪かきが好き
8.こまめに入浴しない
9.たいていは女性の社会進出に否定的である
10.ヘンな匂いがする

以上10項目、これだけキライな理由があれば十分である。

そう、精神科は、『17歳のカルテ』のアンジェリーナ・ジョリーやウィノナ・ライダーみたいな若い患者さんばかり扱っているわけではない。多くの精神科には、8~9割が認知症患者の介護療養型病棟というのがあり、付近には老人保健施設も併設されていたりする。

認知症も精神科作業療法士の担当分野であり、しかも四肢が弱っていて日常生活動作や移動・歩行訓練を要する患者さんも多いので、多少身障系の分野もかぶってくるのである。

いや、そりゃいいんだけどさ…。

何でもこなす覚悟で入った2度目の就職先。それがY病院ではあった。が、苦手なものに囲まれる毎日を想像するだけで気が重い。

担当初日、私はすごすごと病棟に入り、病棟長(看護師長、昔で言う婦長さん)以下みなさんに挨拶し、それまで他の病棟に比べてあまり深く読み込んでいなかった、40冊ほどのカルテを開いていった。

やはり、9割がたが認知症。アルツハイマー、脳血管性認知症、少数派としては主疾患が統合失調症、躁うつ病という人も。

高齢者が多い病棟というのは、独特である。たとえばもともとアルコール依存症であっても、年を取りすぎて足腰が立たなくなったり、脳の血管が切れて心身両面の後遺症が残ったりすると、当然自分でお酒を買ってきて飲むことも出来なくなる。

もともと長らくうつ病を患っていても、年齢とともに自分で自殺をはかることも不可能になり、徐々に認知症の症状が進行して、主疾患が「認知症」に変わったりする。

要するにほとんどの患者さんがボケており(失礼!)純粋な精神疾患の様相を呈する若い患者さんたちの病棟にはない、不思議な落ち着きというか、ネガティブに表現すると諦めムードみたいなものが、病棟全体に広がっているのだ。

昔は妄想も幻覚もすごくて社会からドロップアウトしちゃったけど、もう今は高齢者だし、ボケちゃったんだから、ボケの進行を抑えることだけ考えてればいいんじゃないの、的な。

しかしY病院のスタッフの中には熱い人もたくさんおり高齢者のQOL(生活の質)向上のため皆さん頑張っていた。だから私が担当作業療法士としてついたときには、病棟長はじめ多くのスタッフが、たいそう喜んでくれたのである。

「上野さん経験者だって聞いたし、期待してます」

「あんまり若すぎる人より、上野さんくらいの年齢の人の方が高齢者向きなのよ」

「どんどん新しいプログラム作って、患者さんの病棟生活を充実させてください。協力しますから」

とは言われても私のテンションはなかなか上がらない。そして、そういうローテンションなときは、嫌な情報も結構耳に入ってくるものだ。病棟の看護師さん、介護福祉士さんたちの殆どは協力的だったが、中には担当作業療法士がつくことをよく思わない人もいた。

なぜなら、面倒くさいからである。

看護師さんたちは治療行為に、介護福祉士さんたちは入浴や排泄介助など、患者さんの日常のお世話に忙しい。そこへ持ってきて、作業療法士が日に1~3個のプログラムを実施する。絵画、書道、風船バレー、映画鑑賞、カラオケ、コーラス、季節行事etc。

作業療法士だけでこれらのプログラムを運営するのではなく、参加人数に応じて他のスタッフもつかなければならず、スタッフの必要人数も法律で定められている。そうでないと安全にプログラムを遂行できない。歩けないのに車椅子から立ち上がったり、奇行でプログラムの進行を妨げる人もいるのだから。

そして、上からはなるべくたくさんプログラムをやってください、そして多くの患者さんを参加させてください、と言われる。もちろん治療的意義がメインだが、病院の運営を考えると、診療報酬もたくさん取らなければならないのである。それは、最初の就職のときと同じだ。

それにしても、40人ほぼ全員が参加する集団プログラムについていると、お年寄りが嫌いな理由10項目で挙げた10.ヘンな匂いがする、で、私は悶絶しそうであった。

個人差はあるものの、何とも表現しがたいあの匂い、酸っぱいようなお線香の匂いが混じったような、老人臭に慣れるまでにかなりの時間を要した。

担当初日に、ちょっと近づいてみた女性患者さんの手のひらから強烈な匂いがすると思ったら、ご自分の便だったり…(弄便行為という認知症の症状。ウンチで遊んでしまうんです…)

ウンチで遊ぶ患者さん
思わぬ幸運→あっちゅう間に失望
年寄り上等!!一念発起でバッチコイ