作業療法士と病院

長期実習・精神科編~私がイジメられた理由(1)~

身障の実習が終わり、実家の釧路からH大のある札幌に戻ってきた私。

驚くことに飲んだくれてつぶれた件を、実習先の先生方は学校側にチクっていなかった。飲み会の日に体調を崩しました、くらいに軽く報告されていたのだが、私の醜態には触れられておらず、そのため学校の先生方も誰も私を責めなかった。

心苦しくなった私は、第1回目の実習の反省会で自ら飲んだくれ事件について告白し、そこに居た全員がどよめいたのだった。

多少はスッキリした気分で臨んだ、精神科の実習。

こちらは通院レベルの患者さんらが通う「デイケアセンター」というもので、老若男女さまざまな疾患の患者さん…ここでは「メンバー」と呼んでいた…が、決まった曜日に規則正しく通所しては、テニスやバレーボールなどの運動に興じたり、絵画や陶芸、パソコンを使った簡単な職業訓練などに参加する。プログラムの合間には仲間と歓談したり、スタッフに悩みを相談したりする姿も日常的に見られた。

こう書くとなんだか楽しそうで、遊んでいるように思えるかもしれないが、すべてはメンバーに必要な立派な治療なのだ。スポーツを通して抑うつ気分が解消されたり、協調性が培われたり、妄想状態が一時的に改善されたりする。躁状態のメンバーが、じっくり腰を落ち着けて陶芸や書道、絵画に取り組む習慣をつけることによって適度な落ち着きを取り戻す。

通院している病院では薬物療法中心、ここデイケアセンターではスタッフによるカウンセリングと並行してさまざまなアクティビティを行い、メンバーの日常生活を脅かすさまざまな症状の改善を図るのだ。

ところで、ひと口に精神疾患といってもじつにさまざまである。そのデイケアセンターにも

* うつ病
* 躁病
* 躁うつ病
* 強迫性障害
* 統合失調症
* パニック障害
* 解離性同一性障害(多重人格など)
* アルコール・薬物依存

といった様々な疾患を抱えるメンバーが通所していた。教科書やビデオ資料で一応は勉強してきたものの、実際に患者さんに接するのはこれが初めてだった。

デイケアセンターのメンバーは、入院レベルの患者さんと比べると症状も軽く、中には一見普通の人と見分けがつかない人もたくさんいる。それでも、突然奇声を発し、自分に向かって突進してくる患者さんや、急に慣れなれしくしてきたり、時には卑猥な言葉を浴びせる患者さんもいて、私は初日からかなりビビっていた。

しかしメンバーの皆さんも、長く通所している人になると学生扱いに慣れている。実習初日の挨拶を終えると、さっそく何人かが声をかけてくれた。

「短い間だけどよろしくね」
「いいねえ、若くて、何もかもこれからだね」
「まず手始めにテニスに参加してみたらどう?今から私も出るんだけど」

こんな調子である。

おバカな私は、あんなにビビっていたくせにあっという間に調子に乗った。なんだ、ちょろいじゃん。みんな友好的じゃん。よし、「あの学生さんがいる間に、メンバーの誰々さんがずいぶん良くなったんじゃない?」と評価されるくらいの実績を残してやろう。フフフ。

今思えば救いようのないバカ。キャリアがすべてとは言わないが、机上の学習しかしたことのないガキに、1ヶ月弱の実習でいったい何ができると言うのだろう。

その頃の私はあまりに世間知らずで、「実習は患者さんやスタッフの胸を借りて勉強させていただく機会」ということすらわかっていなかったのだ。

一見順調に進んでいた実習。

積極的にメンバーさんと話し、あらゆるプログラムに参加。レポートの内容にも問題なく、期日に遅れたこともなし。担当ケースとサブケース(実習期間中に主に担当させていただく患者さんたち)も決まり、私は結構場に馴染んで楽しくやっているつもりだった。

長期実習・身障編~私がブッ倒れた理由~
長期実習・精神科編~私がイジメられた理由(2)~